「トラベルルール」って知ってる?6月から暗号資産の規制が強化される

暗号資産 仮想通貨

日本政府は、今年6月から暗号資産の規制を強化することを閣議決定したそうです。
犯罪収益の移転防止、いわゆるマネーロンダリングを防ぐ目的で改正され、国際組織FATFが提唱するトラベルルールを遵守することになるといいます。
今回は、暗号資産の規制が変わることによって私たち個人投資家にも影響があるのか、取引について変更点はあるのかを調べてみましょう。

日本が不合格!?FATFが改善の余地があると指摘

日本政府が、暗号資産についての規制を強化するべきだと判断を下したのは5月23日のこと。
新しいルールは6月1日に施行される見通しになると多くのメディアで報道されました。
6月に入って実際どのような法令がスタートしたのかは、もう少し後になってから分析していきたいと思います。
今回は、どういう経緯で規制強化の流れになったのか調べてみましょう。
まず、暗号資産の規制強化が必要だとされた理由についてですが、これはFATFが発表した第4次対日相互審査報告書による不合格認定を受けての対応です。
FATFとは「Financial Action Task Force」の略称で、マネーロンダリング対策やテロ資金供与対策などの監督を行っている国際組織のことをいいます。
加盟国のマネロン対策について審査を実施しており、協力してくれない国のリストを公開するため、国際的にも大きな影響力があるといわれている組織です。
審査の結果によっては「この国は危ない」というレッテルを貼られる可能性があり、貿易や国際交流にも影響があるでしょう。
日本はこのFATFからマネロン対策やテロ資金対策が十分でないと判断されてしまい、改善の余地があると指摘されています。
FATFの勧告や提示するルールに法的拘束力はないものの、彼らのジャッジを無視すれば日本のイメージダウンにつながることは間違いありません。
今こそ国際的に認められる規制が必要だ!というので、日本も重い腰を上げたって感じですね。
ただ、今回の判定は日本の暗号資産に対するスタンスだけが問題だったのではなく、銀行送金のルールや詐欺撲滅のための規制など包括的に審査した結果だったといいます。
私としては暗号資産の規制強化よりも、税金緩和に動いてほしかったのですが…(^_^;)
これは致し方ないことかもしれません。

暗号資産のトラベルルールとは

日本が6月から施行する規制では、FATFが提言している「トラベルルール」に遵守するとしています。
このトラベルルールとは、暗号資産や電子決済の取引経路を追跡するため、資金移転時に送付人と受取人の情報を通知しなければならないと定めたものです。
つまり、暗号資産を送金する際は、送金元である自分と送金先である相手方の情報がどちらも必要になります。
このルールはFATFが各国の規制当局に導入を求めており、日本もそろそろその準備をしてくれよと審査結果によって通告されたってわけですね。
トラベルルールを導入すると、テロリストや反社のみなさんが不正に得た資金で潤ったり、さらなる闇取引に使ったりしにくくなるでしょう。
もし不正な取引だと感知されれば、はじめに提供した情報によって足がつきやすくなるのです。
私たちが安全に暗号資産をやり取りするには、ある程度個人情報を開示する必要があります。

トラベルルールで何が変わる?

日本での暗号資産取引がトラベルルールを遵守する場合、暗号資産の送受信や入出金に影響があるでしょう。
例えば、次のような場合が考えられます。

送金可能な暗号資産銘柄が限定される

暗号資産取引所によって、トラベルルールに対応するための専用技術が違います。
主に「TRUST(Travel Rule Universal Solution Technology)」と「Sygna(Sygna Hub)」の2つが代表的な技術ですが、TRUSTを採用している取引所では送金可能な暗号資産が限定されています。
例えばCoincheckやbitFlyerはTRUSTを採用しており、送金しようと思ったら対応していなかった…ということも起こりうるでしょう。

トラベルルール対応技術が違うと送金できない場合がある

TRUSTとSygnaは相互互換性がなく、異なる対応技術を採用している場合は取引所間の送金ができません。
同じトラベルルール対応技術を使っていれば問題ありませんが、規制強化によって送金が不可となる場合があるのでよく確認しておきましょう。
例えばSygnaを採用しているbitbankからTRUSTを採用しているCoincheckへも、新ルール開始とともに送金不可となります。
国内でも有名な取引所がトラベルルール対応技術によって二分されており、両者間で送金ができないとなると結構困るのでは…?

送金先の情報が必要になる

トラベルルールを遵守するということは、自分だけでなく送金先の相手方の情報も把握する必要があります。
暗号資産の取引において、相手方のアドレスさえ分かれば送金できるというのがこれまでのルールでした。
だからこそ銀行振り込みなどと違い、余計な個人情報をやり取りすることなく自由に送金できる…というのがメリットだったはずです。
しかしこれからは、送金先のアドレスの他にNFTマーケットなどのサービス名や受取人種別、受取人氏名、国や地域の情報提供が必要になるでしょう。
暗号資産を個人情報なしでやり取りすることができなくなり、相手方の本名を聞いたり、自分の名前を教えたりしなければなりません。

まずはお使いの取引所でトラベルルールについての説明を確認し、送金や入出金のルールを把握しておきましょう。
お知らせメールは即削除!という人は見逃している可能性があります。

国内の場合は取引所のルールに従おう

日本の閣議決定を受けて、日本国内の暗号資産取引所はすでに対応をまとめています。
取引所からのお知らせなどをチェックすると、規制についての詳しい説明や送金・入出金時のルール変更点を調べることができるでしょう。
基本的に国内取引内の売買であればこれまで通りの対応となっており、特段取引の方法を変える必要はなさそうです。
ただし、別の取引所に送金する際はトラベルルールに対応しているか、どの対応技術を用いているか、対応していない場合は送金ができるのかどうかなどをよく確認してください。
送金不可のはずなのに取引所が送金の手続きを受け付けてしまい、結果的に送金不成立で資金が消滅…ということもあり得ない話ではないので十分注意しましょう!

メタマスクを使えばトラベルルールは不要?

トラベルルールが適用されるのは、CEX(中央集権型取引所)のみです。
メタマスクなど暗号資産ウォレットからの送受金については個人情報の入力をする必要がないため、これまで通りでOK!
裏技的に言うと、取引所からメタマスク、メタマスクから取引所というようにウォレットを介せば、トラベルルール対応技術がどうであれ送金が可能になるはずです。
ただし送金時にガス代がかかり、ハッキングされてしまえば元も子もありません。
また、メタマスクならイーサリアム規格、ファントムウォレットならSPL規格など、それぞれのウォレットが対応している暗号資産銘柄も違います。
対応外の暗号資産を送ってしまうと、資金が消滅する危険性もあるので注意しましょう。
もし複数の取引所で口座を持ちたいと思っているなら、メタマスクを介した送金を考えるより、トラベルルール対応技術が同じところを選んだ方が安心ですね。

FATFに加盟しておらず、トラベルルールは全く関係ないよ!という海外取引所もあるでしょう。
しかし日本の取引所から送金する、日本の取引所へ送金するという場合はトラベルルールが適応されます。
詳しくは、国内と海外の両方でお使いの取引所を調べてみてくださいね。

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