ついにイーサリアムでも現物ETFが承認されました。
ビットコイン現物ETFが承認されたのが今年1月、ビットコインが良いならイーサリアムだって良いだろうと言われていたんですよね。
イーサリアムが承認されるのは時間の問題と噂されており、思ったより遅かったと語る専門家もいるようです。
これでますます暗号資産が法定通貨に近付いたと考えられるでしょう。
今回は、イーサリアム現物ETFまでの経緯と暗号資産が現物ETFとして認められる意味について考えてみたいと思います。
祝!イーサリアム現物ETFが承認される
SECは5月23日、イーサリアムの現物を裏付け資産とした上場投資信託(ETF)の8銘柄を承認しました。
これらはNYSE ArcaとNasdaq、Cboe BZXの3つの証券取引所から提出されたもので、承認=「上場にかかる規則の改正が認められた」ことを意味します。
つまり、イーサリアムの現物ETFにGoサインが出たっていうわけですね。
取引を開始させるためには、それぞれのETFがSEC登録手続きを完了させる必要があります。
実際にいつからイーサリアム現物ETFが買えるようになるかは未定で、しかもアメリカでの話なので日本の私たちにはあまり関係ないかも(^_^;)
しかし、これがきっかけで日本政府の暗号資産に対する視線がさらに熱くなることは間違いないでしょう。
なんにせよ、ビットコインに続きイーサリアムでも現物ETFが承認されたことは新たな時代の幕開けを意味しています。
さらにリップルやソラナなんかでも認められれば、暗号資産で投資をするのも珍しいことではなくなるかもしれません。
暗号資産現物ETFが認められるまで
暗号資産でも現物ETFを!という流れは2015年から起こりました。
「Winklevoss Bitcoin Trust 」という銘柄を皮切りに、まずはビットコイン現物ETFで2023年までに10数件の申請が出されます。
しかし、SECはこれをことごとく却下。
その理由は、暗号資産は容易に市場操作ができてしまうこと、現物ETFの組成者が取引量の大きい市場との間で取引監視に関する協定を結んでいないため投資者保護が図れないことが挙げられています。
事態が変わったのは、「Grayscale Bitcoin Trust」という銘柄の不承認をめぐる訴訟がきっかけでした。
このビットコイン現物ETFを組成したグレイスケール・インベストメンツは、上場不承認を不服としてワシントンDCの裁判所に申し立てます。
その結果、裁判所はSECの不承認決定を「無効」とする判決を下したのです。
つまり、裁判所がビットコイン現物ETFを認めなさいよって言ったわけですね。
ビットコイン”先物”ETFを上場する証券取引所は大規模な取引所との間で取引監視協定が結ばれているという理由で承認されており、簡単に言えば「そんなしっかりとした取引所なら現物ETFも扱って良いはずよね?」というのがワシントンDC巡回区控訴裁判所の判決の理由になったようです。
これを受けてSECは、現物ビットコインの市場と価格の変動に相関関係が認められ、取引量が大きく、かつ規制されたビットコイン先物市場と取引監視協定を結んだ証券取引所だったら現物ETFも承認するという判断基準に改訂します。
これまで不承認のスタンプを押してきた銘柄についても、再審査を経て上場を認める運びとなりました。
そして2024年1月10日、ついに11銘柄のビットコイン現物ETFが承認されたのです。
ビットコインに続いてイーサリアムでも!
イーサリアム現物ETFが承認されたのは、暗号資産現物ETFにおいて2例目の銘柄となります。
ビットコインだけでなく、イーサリアムでも幾度となく現物ETFが申請されてきました。
しかし、ビットコインと同じような理由で却下され続けていたのです。
2024年なってようやく承認されたのは、申請した取引所がいずれもシカゴ・マーカンタイル取引所と取引監視協定を結んでいたからだといいます。
また、シカゴ・マーカンタイル取引所に上場されているイーサリアム先物取引と現物取引との価格相関がかなり高いものであったことも承認に値すると判断した理由になりました。
価格の透明性、ファンドの保有資産における情報開示、市場監視の手続きなど、投資者保護の観点から見ても問題ないと結論付けられたようです。
イーサリアムでも現物ETFが認められるのは、ビットコインの延長線上にある当然の結果と考えられるでしょう。
しかし、イーサリアムには一つだけビットコインとは違う論点が持ち上がっています…
イーサリアムは有価証券?
イーサリアムは、ビットコインよりも現物ETF承認までのハードルが高いといわれていました。
SECは1946年のハワイ事件における判決から生まれた「ハワイ基準」と照らし合わせ、暗号資産の販売は「有価証券の無登録募集」なのではないかと指摘しています。
いっぽうビットコインに対しては有価証券ではなく、金融商品であると見てきました。
ビットコイン現物ETFが承認されたのは、金融商品として認められていることが根底にあったからかもしれません。
しかしイーサリアムを含むアルトコインについてはそうではなく、SECがどう考えているかは明らかにされていませんでした。
SEC幹部のなかには、かつて講演で「イーサリアムは有価証券ではない」と述べて暗号資産業界から称賛されたメンバーがいたそうですが…
彼の意見は個人的な見解に過ぎず、組織としてのSECは依然イーサリアムに対して厳しい見方をしていると考えられていました。
2024年には、イーサリアムを有価証券とすることを前提としてSECの調査が行われたという報道もあります。
これが現物ETFの承認とどう関係があるかというと、現物ETFを上場するには裏付け資産が有価証券ではなくコモディティ(商品)である必要があるのです。
つまり、金融商品であるビットコインは許せるけど、有価証券であるイーサリアムはダメなんじゃないの?というのがSECの意見だそう。
それが2024年5月にイーサリアムでも現物ETFが承認されたというのは、結果的にイーサリアムが有価証券から金融商品に昇格したことを示しているようなものだと思います。
ただ、これによってSECの暗号資産に対する考えが大きく変わり、関連する規制などが改正されるとは限りません。
実際、SECのゲンスラー委員長は「暗号資産の大部分は有価証券である」との声明文を出しています。
イーサリアムがOKならリップルでもソラナでも、その他のアルトコインも現物ETF承認が見込めると期待するには時期尚早でしょう。
日本で暗号資産ETFが始まる可能性はある?
日本では今のところ、ビットコインでもイーサリアムでも暗号資産を裏付け資産にしたETFを組成する動きは見られていません。
個人投資家がネットを通じて米国株取引をすることは可能で、日本人がアメリカの証券取引所でビットコイン現物ETFの買い付けを行う可能性はあります。
しかしこの場合、生まれた利益は一般的な米国株取引と違って分離課税ではなく総合課税の対象です。
最近はつみたてNISAを始める人も増えてきましたが、ビットコイン現物ETFで儲けた利益を申請する時は注意しなければなりません。
いっぽう日本の取引所で暗号資産ETFが組成されることについては、暗号資産業界から抵抗を受ける可能性があるとされています。
これは、通常の暗号資産取引で生じた所得と暗号資産ETFで生じた所得では課税のルールが異なるためです。
結果的に取引所を通じてETFを取引すると不利になるので、投資家を中心に強い反発があると考えられています。
まずは税制上の仕組みを整えないと、日本で暗号資産ETFが生まれるのは難しいでしょう。
今回はちょっと難しい話をしてみました(^_^;)
ビットコインに続いてイーサリアムでも現物ETFが承認されたことは、暗号資産の未来を変える大きな一歩だと思います。
次はどの銘柄がSECに認めてもらえるのでしょうか。
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