医療界にもNFTの波が!実用化の可能性は?

NFT

欧州各国で、医療とNFTの融合が研究され始めているようです。
2022年12月に発表されたドイツ・ミュンヘン工科大学の論文では、医療におけるNFTの適用について考察されたといいます。
医療データをNFT化しようという動きも見られており、今後はブロックチェーンにカルテ情報を記録する病院が登場するかもしれません。
今回は、医療にNFTの技術を応用すると何が起こるのか考えてみましょう。

医療データをNFT化するってどういうこと?

ミュンヘン工科大学の研究チームは、皮膚科の医療行為においてNFTの技術が応用できないか分析を試みました。
アトピーなどの皮膚疾患は経過を観察することも治療の一部ですが、患部の画像を撮影したり、患者がその画像を所有したり、医療従事者が画像を閲覧したりするプロセスにNFTを適用させるとどうなるでしょうか。
現在は診療科などが医療データを保有し、患者本人が閲覧できるのは医師からの説明を受ける時に限られています。
基本的に自分の画像を自分で管理することはできず、病院とはいえ他人に個人情報を預けてしまうようなシステムになっていました。
また、担当医以外にも複数の臨床医師や検査医師などが症例の検証・分析をしたり、データに追加情報を記録したりすることもあります。
研究チームは、個人の医療データをNFT化すれば誰がどこで閲覧・記録したか明確になり、患者自身が自分の情報を守れるのではないかと考えます。
現在もセキュリティ性の高いシステムによって電子カルテなどの医療データは厳重に管理されていると思いますが、ブロックチェーン技術を応用することでより透明性の高い情報管理、情報活用が可能になるとしています。

医療データをNFT化するメリットとは

セカンドオピニオンを利用したい場合、まず患者本人が現在の担当医に相談して別の医師に診てもらいたいと申し出る必要があります。
「先生を怒らせるかも」
「嫌な気持ちにさせたら治療に影響があるかも」
などと心配になり、なかなか言い出せない患者も多いと思います。
もし患者自身が画像データを保有していれば、担当医に遠慮することなく別の医師に見せて診断してもらいやすくなるのでは?
担当医から紹介状を書いてもらわなければならないケースもありますが、今よりももっと手軽にセカンドオピニオンを受けられるきっかけになると思います。
カルテの管理が不十分で個人情報が紛失したり、医療データの盗難や改ざんの被害にあったりする可能性も0ではありません。
治療のために撮影された自分の画像が悪意によって外部に持ち出され、誰かの個人的な欲求を満たすために使われていたとしたら…
気持ち悪いですよね(´;ω;`)
臨床用画像の撮影後すぐにNFT化すれば、改ざんや流出を防ぐことにつながるでしょう。
本来の目的と違った使い方ができないように、閲覧や公開に制限をかけることもできると思います。
その他にも、カルテ管理の効率化や治療や投薬の記録が追跡しやすくなるなどのメリットもミュンヘン工科大学の論文で言及されています。

医療データをNFT化すると考えられるデメリットは?

治療記録などの個人的な医療データをNFT化すると、自分で自分の情報を守れるというメリットがあります。
しかし、病院から患者本人へ情報管理の責任が移行することは、良い面ばかりではありません。
個人が医療データを保有する時代になると、それを搾取しようとする者も現れるでしょう。
だまし取られたり、高額で買い取ると持ち掛けられたりする可能性があります。
病院で保管されていれば安全だったはずの医療データを個人が保有することによって、むしろ誰でも簡単にアクセスできる状態にしてしまう恐れがあるのです。
私たち一般人が医療データの重要性を正しく認識し、適切な管理ができるかどうか疑問が残ります。
いきなり「今日から自分で大切に保管してね」と言われても、どこにしまっておけば安全なのか分かりませんよね。
例えばメタマスクに医療データNFTを格納できたとして、ダミーの表示に引っかかって「署名」をクリックしてしまったら…
あっという間に自分の個人情報が流出してしまうわけです。
医療データのNFT化は技術上、現時点でできないことはありません。
しかし、私たちが個人でしっかり管理でき、本来の医療目的でのみ使用を許可するシステムはまだ構築されていないと言えるでしょう。
誰でも厳重な情報管理ができるプラットフォーム、個人情報の閲覧状況や記録管理状況がリアルタイムにチェックできるプラットフォームが生まれない限りは、医療データのNFT化は難しいと考えられます。

医療機関とDAOの関係

ポルトガル・アレンテージョ科学技術パーク(PACT)の研究チームは、分散型自律組織(DAO)による医療革命を模索する記事を発表しました。
すでに医療分野ではさまざまなDAOが生まれていますが、PACTの研究チームは次のようなメリットがあると考えています。

透明性のあるガバナンスができる

医療DAOに所属する病院や医師、保険会社は、透明性と信頼性の提供が可能になるとしています。
医療界では病院ぐるみの隠ぺいがあったり、組織の腐敗によって適切な医療行為がされなかったりする事件も起きていますよね。
人が集まっている以上、すべての医療従事者が良い人間というわけではないと思います。
例えば権力を欲するような、野心や個人的な目的のために行動する医師も少なからずいるでしょう。
また、保険会社が善良な組織でないことも…
保険金の支払い事由に該当しているのになんだかんだと理由を付けて支払いを拒否したり、保険金請求のために提出された契約者の個人情報
を不当に流用したりする可能性もあります。
いっぽうDAOに所属している医療機関や保険会社は、スマートコントラクトによって統治されるとPACTは考えているようです。
医師がどのような治療を行い、保険会社がどのような運営をしているか明確化するようなシステムを構築すれば、私たちは安心して身を任せることができるでしょう。

医療産業のパフォーマンスが向上する

医療機器や医薬品などを扱う企業が医療DAOに所属することによって、多様な製品・サービスの開発につながると考えられています。
小規模企業の場合、良いアイディアや技術を持っていても資金不足のために商品化できないケースもあるでしょう。
DAOのシステムを活用すれば他の所属企業から資金援助や投資を受けられる可能性があります。
クラウドファンディングを利用する場合も、資金調達を受けるプロジェクトをコミュニティーメンバーによって投票してもらうことが可能です。
DAOのさまざまな機能を利用すると、結果的に医療業界全体の問題解決や業務効率化などのパフォーマンスも向上するのではとPACTは考えています。

医療はNFT化が難しい?

ここまで医療の分野でブロックチェーン技術を応用するメリットを挙げてきましたが、実現するまでの道は困難を極めるようです。
治療データや臨床用画像は保護対象保険情報(PHI)のなかでも特に機微なものであるとされ、ただNFT化するだけではセキュリティ性が十分ではないという指摘もあります。
ブロックチェーンに刻めば改ざんや盗難を防げるといわれているものの、実際は取引所から暗号資産が流出していますよね。
ウォレットアドレスに限らず、氏名や住所、投資経験などの取引所ユーザーの個人情報も流出している可能性があり、ブロックチェーン技術が万能とは言えません。
もし医療分野でNFT化やDAOの活用を目指すなら、専門的な枠組みやガイドラインなどの整備が最も優先されるべき課題となるでしょう。

 

医療の現場でNFTが発行されるのは、まだまだ先になりそう。
自分で情報管理ができるから安全!便利!と思いましたが、同時に大きなリスクも抱えることになります。
しかし今後の研究結果によっては、世界を変える発明になるかもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました