2024年9月末、ついに金融庁が暗号資産に関する規制の見直しを検討し始めたと報道されました。
現在最大55%にもなる暗号資産取引にかかる税率が下がったり、ETFの承認にもつながったりするような決定がなされる可能性があります。
投資家にとって都合の良いルールができれば、日本の暗号資産が急速に発展するかもしれません。
今回は、金融庁と暗号資産に関するニュースについて整理しておきましょう。
金融庁が暗号資産ルールを見直し!
世界の金融情報を提供しているブルームバーグは、9月30日に「日本は暗号資産の規制を見直す予定である」と報じました。
金融庁関係者との談話が情報の出処だとしていますが、金融庁からは正式なコメントは発表されていません。
ブルームバーグによると、金融庁による暗号資産規制見直しは数ヶ月にわたって行われるとし、まずは現行のルールに対して国のアプローチが効果的であったか評価するといいます。
その上で現行通りの規制を継続させるのか、はたまた新たなルール作りに着手する必要があるのか判断するつもりのようです。
もし「今まで厳しすぎたよね」となれば、規制が緩和される可能性もあります。
暗号資産ETFの承認など、国内ファンドや一般投資家にとって嬉しいニュースが飛び込んでくる気配が高まってきました。
しかし、最も大切なのは現在の規制が投資家保護に役立っているのか冷静に判断することです。
規制が緩和されれば投資のハードルが下がりますが、何かあった時のセーフティネットが十分でなければみんなで手をつないで地獄に堕ちることになるでしょう。
金融庁は資金決済法を改正して暗号資産のための新ルールを開設するべきか、それとも暗号資産を証券として金融商品取引法の対象にするべきかのかを見極める時が来たのです。
金融庁は暗号資産ETFについても言及
8月の報道によれば、ブルームバーグのインタビューに対し、金融庁の井藤長官は「暗号資産ETFの承認については慎重に検討する必要がある」と答えたといいます。
まあ、立場ある人ならそう答えるのが至極当然で、私でもそう言いますね。
勝手に「俺は承認しても良いと思うけどね!」なんて言えないでしょ(笑)
ただ、ETFは長期にわたって安定的に資産形成できる投資として期待されているものであり、暗号資産は必ずしもこれに該当しないと「多くの人が考えているのではないか」と井藤長官は述べたそうです。
どういうことかというと、「ETFに求められている安定性が、果たして暗号資産で叶えられるのか(とみんな思ってるんじゃない?)」という意味ですね。
個人的な考えは明言しないものの、暗号資産ETFを承認したとて「安心して投資できる人はどれだけいるのか」と言いたいのでしょう。
アメリカやオーストラリア、香港でも暗号資産ETFが承認されていますが、すぐに日本も続け!というわけにはいかないようです。

海外暗号資産取引所に警告!
金融庁といえば、Binance(バイナンス)とのバトルを思い出す人も多いはず。
2018年3月、金融庁は世界最大手ともいわれる海外暗号資産交換業者Binanceに対して日本居住者向け業務の停止を求めました。
この警告は資金決済法に基づくもので、投資家の保護を目的としています。
これは世界的に見ても厳しすぎるとの声が挙がっていますが、このルールがあるからこそ日本の投資家が守られてきたといえるでしょう。
金融庁はBinanceが無登録業者であり、日本で営業してはならないと主張しています。
Binanceは日本語のホームページも開設しており、積極的な勧誘を行っていたと指摘されました。
警告を受けたBinanceは一時的に日本語ページを削除したものの、頃合いを見てまた元に戻したそう…(^_^;)
これが金融庁に見つかり、2021年6月に再び警告されてしまうことになりました。
1度で言うことを聞かなかったBinanceは、2度目の警告でようやく日本向けサービスを停止します。
しかし2023年8月には日本の取引所を買収し、外資系日本企業としてBinance Japanを設立。
日本人ユーザーはBinanceからBinance Japanへ移行手続きを行うことで実質上取引を継続できるようになりました。
国内取引所なので本人確認が必要で、金融庁が定める資金決済法のもとに管理されます。
ユーザーは金融庁の登録を受けた他の国内取引所と同じように使えるので問題ありませんが、金融庁としては上手いこと逃げられたような形になってしまい面白くなかったでしょう。
金融庁はBinanceのほかにも、BybitやBitget、MEXC Globalなどの海外取引所にも同様の警告を発しています。
日本では規制が厳しすぎるから海外取引所を使うという人も少なくありませんが、警告が出されれば取引所が使えなくなる可能性もあります。
問題なく使えていても無登録業者との取引である限り、金融庁の保護対象からは除外されます。
海外取引所を選ぶ際は、どの国からも警告が出されていないこと、心配なニュースが出ていないことをよく確認して慎重に検討しましょう。
日本の取引業者にも厳しい金融庁
無登録業者に対して厳格に対処するだけが金融庁の仕事ではありません。
今年5月にビットコイン約482億円相当を流出させてしまった国内取引所DMM Bitcoinに対し、金融庁は9月26日に業務改善命令を出しました。
金融庁はDMM Bitcoinのシステムにおいてリスク管理体制が不十分であったとし、具体的な事実関係や根本的な原因の洗い出し、経営責任を明確にすることも求めています。
さらに被害に遭った顧客の保護に努めること、リスク管理の強化や流出リスク対応の整備なども指示しました。
DMM Bitcoinは10月28日までに業務改善計画を提出しなければならず、その後は毎月進捗状況を報告する必要があります。
金融庁もこれを監督する責任があるため、なかなか忙しそうですね…
web3.0の推進には意欲的?
日本の暗号資産規制は厳しい!と世界でも言われていますが、web3.0業界に関しては金融庁も温かい目で見ているようです。
日経新聞が9月24日に伝えた情報によると、金融庁がweb3.0ゲーム会社に対してゲーム内トークンの扱いを容易にする仕組みづくりを始めたといいます。
現在、NFTゲームなどブロックチェーンの技術を利用したいわゆるweb3.0ゲームを開発する場合、トークンの発行や取引の場を提供する行為は「暗号資産交換業」に該当してしまうと懸念されていました。
ゲーム内で暗号資産のシステムを構築するのは簡単だけど、金融庁に登録を受けていない業者が自由にトークンを発行して良いものなのか…
もしゲーム内でスワップ機能を設ければ、無登録業者のまま取引所を運営していることになります。
これは金融庁から警告を受けたBinanceと同じようなものです。
日経新聞の報道が真実なら、金融庁が正式にweb3.0ゲームでのトークンの位置づけを決定し、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産と区別するようなルールが設けられる可能性があります。
トークンの扱いについてはっきりすれば、ゲーム開発会社も安心ですね。
日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)でも、日本でweb3.0事業を発展させるには「何が暗号資産交換業に該当するか」を明確にするべきだとして議論を進めています。
金融庁によるゲーム内トークンの仕組みづくりに対する検討は、すでに始まっているようです。
これが形になれば、「暗号資産」と「トークン」の違いも明文化されることになるかもしれませんね。
金融庁がもっと規制を緩和してくれれば、暗号資産投資はやりやすくなります。
しかし、彼らが厳しいからこそ、私たち投資家は安心してビットコインを買えるわけですね。
税率は下げてほしいけど、海外取引所に対して厳しい姿勢は変えないでもらいたいなと思いました。
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