トランプ氏の大統領選出を受けて、アメリカでは暗号資産時代の到来が予感されています。
日本でも暗号資産に対する規制が緩和され、投資家に有利な環境が整備されるのではと期待されていますが…
現在どれくらいまで議論が進んでいるのでしょうか。
今回は、日本で暗号資産に関する法律や税制が変わる可能性がどれくらいあるのか考えてみたいと思います。
やっぱり慎重?石破首相の答弁に注目
12月2日の衆議院本会議では、代表質問の場において国民民主党の浅野議員が「日本では、暗号資産に課せられる最大55%の税金が足かせになっている」と指摘しました。
世界的に暗号資産の市場規模が拡大しているなか、日本は高い税率のせいでweb3.0企業や個人資産を海外へ流出させているというのです。
さらに浅野議員は、日本で暗号資産投資が活性化し、web3.0ビジネスを成長させ、資産を国内に回帰させるにはやはり「申告分離課税」や「損失繰越控除」を適用するべきだと主張します。
また、アメリカでビットコインETFが承認されたことにも触れ、早急に暗号資産ETFを取引する環境の整備が必要であるとも述べました。
これに対し、石破首相は慎重な姿勢を示します。
まず、暗号資産に対し一律20%の申告分離課税を適用することについて「国民の理解が得られるのか?」と疑問視し、さらに「投資家保護のための規制が敷かれている株式や投資信託と同じように、(それらの規制がない)暗号資産への投資を国が推奨して良いのか?」という課題があると述べました。
ETFについては、暗号資産を対象とするかは「国民にとって投資を容易にすることが本当に必要なのか」を検討する必要があるとしています。
一貫して、まだ検討の段階であり、新たなルールを設けるかどうかはまだ決められないという答えになりました。
首相が新しくなったからといって、自民党が政権を握っている限り日本の慎重なスタンスはほとんど変わらないかもしれません。
国民民主党だったらできるのか
石破首相の答弁に対し、国民民主党の代表である玉木氏は「ゼロ回答(有効な回答が一つもない)」だったとSNSに投稿しました。
浅野議員が質問した一律20%の申告分離課税、損失繰越控除の適用について明確な意思が示されることなく、ただ「検討します」という答えに徹した石破首相には失望したといいます。
慎重に慎重を重ねているだけでは、ビットコイン大国を目指して猛進するアメリカとの差は広がる一方です。
かつて前岸田首相が掲げていた「web3.0先進国」の国家戦略はどうなってしまったのでしょうか。
一体いつまで日本は「検討」を続けるのか…
ぜひともその検討の場を日本国民に公開して、意義のある話し合いがなされているのか、活発な議論が重ねられているのか見せていただきたいものですね。
はじめから「暗号資産なんてダメに決まってる」という固定観念ありきの検討では、何も変わらないでしょう。
国民民主党には暗号資産ルールの変更をはじめ、さまざまな革命が期待されています。
玉木代表の「国民民主党が頑張るしかない」という言葉に歓喜する支持者も多いですが、反対勢力はいくらでも強気なことを言えるのです。
国民民主党が政権を握った後、あらゆる勢力に遠慮して慎重派に転じてしまう可能性もゼロではありません。
だからこそ、支持者もそうでない人も、主張する内容やその根拠について把握し、実行力がある政党なのか分析する必要があるのです。
そして玉木代表が首相になってから「これからゆっくり検討します」なんて言ったら、怒らなければなりませんね(-“-)
暗号資産取引で発生する税金とは
暗号資産取引において、現行では基本的に暗号資産の売却などで利益が確定した時に税金が課せられるルールとなっています。
暗号資産で得た利益は「雑所得」に区分され、給与所得や事業所得などと合算した総所得に対して「超過累進税率」が適用されます。
この課税ルールは「総合課税」と呼ばれますが、例えば暗号資産取引の利益とその他の所得の合計が1億円になると55%もの税負担が発生するというわけです。
せっかく1億円も稼いだのに、半分も持っていかれるんですね(^_^;)
売却のタイミングで価格が急騰し、うっかり「億り人」になって多額の税金を収めなければならなくなる可能性もあります。
暗号資産で荒稼ぎした人が税金のかからないドバイへ移住するなんて話も聞きますが、税制において日本在住はデメリットしかないといえるでしょう。
これは日本で暗号資産市場がそれほど盛り上がらない原因にもなっています。
だからこそ国民民主党はこの税制を改革して、暗号資産で稼ぐことの懸念を払しょくするべきだと主張しているのです。
暗号資産の税制が変わるとどうなる?
与党に対し、国民民主党は暗号資産で得た利益について「一律20%の申告分離課税」への変更を要望しています。
申告分離課税とは、株式譲渡などで生じる利益と同様、他の所得と別に計算して課税されるルールです。
現行では、暗号資産の売却でそれほど儲けていなくても、他の所得との合計額によっては高い税金を支払わなければならないケースもあります。
暗号資産取引で得た利益に申告分離課税が適用されれば、今より税金が抑えられるでしょう。
また、一律20%の税率になれば、儲け過ぎを恐れず積極的に取引できるはずです。
あまりに高い税率では「国が暗号資産ビジネスを推進するのは利益を搾取するためだ!」と誤解されてしまいそうだし、ここは他の投資と同じというのが無難かなと思います。
暗号資産取引の損失繰越を可能にするメリット
国民民主党は暗号資産取引について「損失の繰越控除」の適用も要求しています。
これは本年分の損失を翌年以降に繰り越すことができるというものです。
金融所得において、利益のすべてが課税対象になるのではなく、損失を差し引いた純利益に対して税金が課せられます。
現行では今年中に発生した損失は今年のうちに控除し、どれだけ損失が大きくても翌年に繰り越すことはできません。
株式譲渡では損失発生の翌年以降、最長3年間まで繰越控除が可能です。
国民民主党は暗号資産取引においても、この繰越控除を認めるべきではないかと主張しているわけですね。
繰越控除も、株式や投資信託に適用されています。
なぜ今まで暗号資産取引だけがダメだったのか、ちょっと疑問に感じるくらいです。
暗号資産取引の活性化を目指すには、従来の投資と同じルールにすることが効果的でしょう。
日本では暗号資産が「金融資産ではない」?
日本の現行ルールにおいて、基本的に暗号資産は「資金決済」のためのツールとして認識されていました。
世界ではすでに金融商品として株式に準ずるものに該当し、ビットコインに対し法定通貨の役割まで与えている国もあります。
SECに「証券だろ!」と言われると否定しますが(笑)、特にビットコインはほとんど金融商品として存在しているとみて良いでしょう。
日本でも資金決済法ではなく金融商品取引法に規制されるべきだという議論が進んでおり、政府が証券性を認め、申告分離課税が適用される可能性があります。
いまだに金融商品として数えられていないのは、政府が暗号資産をポイントやウェブサービス上のコインに過ぎないと誤解しているからではないでしょうか。
有識者が石破首相が納得いくまで説明すれば、意外と簡単に税制が変わるかもしれません。
岸田内閣の時、暗号資産についての金融当局の温度感が「少しずつ変わっているのを感じていた」という政府関係者もいます。
しかし首相が変わり、また振り出しに戻ってしまったという感も否めません。
来年こそ、日本の暗号資産ルールがポジティブに変更されることを願っています。
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