トランプ大統領主導のもと、世界をリードする暗号資産大国になるための計画が始まったアメリカ。
国民にとって、もはやビットコインは避けて通れない金融資産の一つだと言えるでしょう。
一方、ブラジルでは暗号資産プロジェクトの一部の活動を禁止する命令が下されました。
これからの時代、世界の国々は暗号資産推進派と否定派で大きく二分されてしまうかもしれません。
今回は、ワールドコイン(WLD)がブラジルで禁止された経緯について調べていきます。
ワールドコインってなに?
誰もがグローバル経済に触れることのできる技術の提供を目的とした「World Coin(ワールドコイン)」は、OpenAIサム・アルマン氏らが立ち上げたプロジェクトです。
具体的にどんなことをするのかというと、まず「本物の人間であること」を証明するデジタルIDを発行します。
ワールドコインはAIやボットが人間に混ざって生活するようになる未来を見据え、本物の人間を区別する技術が必要だと考えているのです。
彼らは「地球上に住むすべての「人」が未来の最先端技術による恩恵を受けられるように…」と願っているわけですが、そこにAIは含まれません。
日本では生活保護の制度がありますが、AIやボットが自ら生活困窮者であるとの申請をして、人間でない彼らが給付金を受け取るという未来がやってくる可能性も…
すでに、ボットを使用して不正に大量の投資注文をしたり、暗号資産のエアドロに参加したりする事例が発生しています。
ワールドコインは独自の技術により人間とAI・ボットを見分け、人間のみが報酬を受け取れるようにしたいと考えているのです。
この仕組みはいずれ、国民全員が生活に必要な最低限の収入を得られるベーシックインカムにも利用できるとしています。
つまりワールドコインは、AIでもボットでもない、すべての「人」が貧富の差や生まれた環境に左右されず、安心して暮らせる世界を構築しようとしているのです。
ワールドコインが提供するID・トークン・ウォレットについて
ワールドコインプロジェクトは、次の3つをすべての人間に配布したいと考えています。
World ID
ワールドコインが発行するデジタルIDです。
「Orb(オーブ)」というスキャン装置を使い、人間の瞳にある虹彩を読み取ることでこの世に2つとないIDを発行します。
虹彩は人それぞれ違い、年齢を重ねても基本的に変わらないものです。
これによって個人を区別することができるため、他に氏名や住所などの個人情報を明示しなくても良いというわけですね。
2024年1月には、1000万人のユーザーが虹彩スキャンを完了したとか。
日本の場合、18歳以上であれば取得が可能です。
保護者が許可しても、付き添いで虹彩スキャンしようとしても、18歳未満のお子さんはWorld IDを取得できません。
World Coin(WLD)
ワールドコインが発行するトークンです。
虹彩スキャン後、World IDを取得した人に無料で配布されます。
WLDは売買取引によってレートが変わり、2025年1月現在約294円です。
一部店舗やオンラインショップではWLDを使用した決済が可能で、暗号資産取引所に送金して現金として出金、または他の暗号資産に交換することもできます。
ただしWLDの取り扱いは海外取引所のみとなっているので、出金する場合は海外⇔国内間の送金も必要です。
World App
ワールドコインで使用するウォレットアプリです。
WLDの支払いや送金、イーサリアム系トークンの取り扱いもできます。
World IDを取得する際にも使われ、虹彩スキャン前にWLDの受け取りを予約することも可能です。
ワールドコインのプロジェクトを利用するなら、事前にインストールしておきましょう。
Orbは日本の首都圏を中心にいくつか設置されており、World IDを発行してもらうには現地まで行く必要があります。
私も、実は今年のお正月に行ってきました( *´艸`)
ちょっと時間がかかったけど、ちゃんとWorld IDが取得できましたよ♪
ブラジルではNO!?虹彩スキャンによるWLDの配布を禁止

ワールドコインは2023年7月にサービスを開始、World Appの提供とOrbの稼働をスタートさせました。
ブラジルでも50万人以上の人が虹彩スキャンを済ませ、WLDを取得したとか。
しかし、データ保護当局はプロジェクトに対し、2025年1月25日から虹彩スキャンの報酬として暗号資産を配布することを禁止する命令を下したのです。
その理由として、「金銭の提供を条件に生体認証データを提出させることは個人の自由な意思決定を妨げる可能性がある」としています。
また、収集した虹彩データに関しては、処理責任者を公式サイト上に明記するよう求めました。
ワールドコインは「SNS上に広まっている誤った情報によってブラジル当局が勘違いしている」と主張し、今後は当局と連携を図りながらブラジルユーザーの利用が再開できるよう努めるとしています。
2024年にはスペインでも一部停止命令
このような命令が出たのはブラジルが初めてではなく、2024年3月にはスペインのデータ保護当局もワールドコインに虹彩データの収集・処理を一部停止させています。
ワールドコインはWorld IDの安全性を強調し、プライバシー保護に関する問題もないとしました。
その上で、裁判所に対して当局の命令を停止してもらうための申し立てをしたとか。
しかし、当局に寄せられたユーザーからの苦情には未成年から虹彩データを収集していたこと、データ提供に同意すると撤回はできないというものもありました。
一応World ID取得の年齢制限は設けられていたものの、年齢確認のシステムが不十分だったと指摘されています。
データ保護当局はワールドコインに対し、スペインにおける最長3ヶ月間の活動禁止を求めました。
否定派の国も結構多い?アフリカとアジアでも調査対象に
さらに調べていくと、他にもワールドコインを問題視している国が見つかりました。
2023年10月ケニアの規制当局に対し、特別調査委員会がワールドコインの事業を停止させるよう勧告しています。
2024年2月には香港でも個人情報保護委員会がワールドコインの事務所に立ち入り調査を行っていたようで…
同年3月に韓国の個人情報保護委員会もワールドコインの調査を開始、9月には個人情報保護法に違反したとして約1億2,200万円の罰金を命じました。
ワールドコインの活動に異議を唱える理由として、個人情報を収集することを当局を報告しなかったこと、年齢確認方法が信頼できるものでなかったことが大きな問題だとされています。
ワールドコインの課題
個人の虹彩情報を取得するということは、AIやボットと人間を区別するためだけでなく、さまざまな犯罪に使われる可能性もあります。
ワールドコインはセンシティブな情報を提出せずに個人を特定できるとしていますが、そもそも虹彩情報がかなりセンシティブですよね(^_^;)
第三者に対して、気軽に提出できるものではないはずです。
Orbから取得した個人の虹彩データを、他人が勝手にワールドコイン以外で使用することもあり得ない話ではないでしょう。
その取扱い方法は、すべてのユーザーに向けに分かりやすく説明するべき重要な要件だと思います。
日本では、今のところワールドコインに対して禁止命令などを出していません。
Orbで虹彩スキャンすることも、World AppやWLDを取得することも可能ですが、今後何らかの停止措置ができる可能性もあります。
WLDも国内取引所で取り扱っていないので、投資する際は十分リスク等を考慮して判断してくださいね。
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