石破氏が首相になって、ますます地方創生が進んでいるようです。
NFTを活用したプロジェクトも増えており、若い人が少ない地域に観光客や移住者を呼び込もうとさまざまな取り組みが企画されています。
そんななか、日本郵便株式会社は「NFT×地方創生」の実証実験として石見銀山の未来を創るプロジェクトをスタートさせました。
今回は、「石見銀山みらいコンソーシアム」のNFT活用事例についてご紹介しましょう。
日本郵政グループの「ローカル共創イニシアティブ」とは
日本郵政グループは、地方自治体や企業に社員を派遣し、共同事業として新規プロジェクトの創出に取り組んでいます。
この施策は「ローカル共創イニシアティブ」と呼ばれ、島根県大田市の石見銀山エリアでは「石見銀山みらいコンソーシアム」というプロジェクトが立ち上げられました。
ここに日本郵政グループの社員が2024年4月1日から加わり、島根県大田市とともに銀鉱山のあゆみや歴史的な街並み、豊かな自然と地域の文化をPRしています。
「石見銀山みらいコンソーシアム」のNFT活用実証実験
石見銀山みらいコンソーシアムは、NFTを活用した地方創生実証実験として「しまねふるさとフェア2025」と「石見銀山デジタルスタンプラリー」を企画しました。
しまねふるさとフェア2025
島根県と広島地区観光情報発信事業実行委員会は、広島から島根への交流人口増加、観光客誘致を目的として地域のPRや体験、ワークショップの提供、特産品の販売などを行うイベントを開催しました。
1月18~19日の2日間にわたり、ひろしまゲートプラザのハノーバー庭園に設置された屋外会場で各種ブースを設置。
しまね和牛やそば、日本酒、海の幸などを販売した屋台村では、島根グルメに舌つづみを打つ人でにぎわったようです。
石見銀山みらいコンソーシアムは、石見銀山世界遺産センターと道の駅ロード銀山のブースにて「石見銀山お招きNFT」を用意しました。
モチーフとなったのは大田市のマスコットキャラクター「らとちゃん」で、ブースに来訪した記念として、「銀探し」の体験に参加した証として、切手と絵はがきのセットを購入した特典としても配布されました。
石見銀山デジタルスタンプラリー
3月中旬に予定されている第2弾実証実験では、石見銀山エリアの観光施設、飲食店やお土産屋などの店舗、郵便局窓口などに二次元コードを設置。
ここからデジタルスタンプNFTが取得できる仕組みを考えているようです。
専用サイトで二次元コードを読み取ると地図台帳にデジタルスタンプが記帳され、取得したNFTの数に応じてエリア内外で得られる特典の内容も変わるとか。
現在はまだ詳しいことが決まっていないとのことですが、石見銀山周辺を観光する際に遊べる面白いコンテンツとなりそうですね。
石見銀山エリアで取得できるNFTの意味とは
石見銀山エリア側のデータベースからは、地元住民や観光客が地域との接点が生じた際に「地域とのかかわり」を証明するNFTが発行されます。
これをエリア内外で配布・使用してイベントを盛り上げ、特典の提供などで再来訪を促したいというのが石見銀山みらいコンソーシアムの狙いです。
NFT取得者は、LINEにて地域情報が配信されるほか、石見銀山を訪れた際に使える特典を受け取ることができます。
例えば「しまねふるさとフェア2025」で配布されたNFTを見せると世界遺産センターの入場料金が割引になり、さらにここを訪れたことを証明する記念NFTがもらえるそうです。
「龍源寺間歩」と呼ばれる長さ600mもの大坑道では、地域のお店で使える割引券や来訪記念NFTが取得できるとか。
第2弾として企画されているスタンプラリーでは、NFTスタンプを集めたいという欲を刺激して銀山・世界遺産センター・市街地の3つのエリアを巡ることを期待しています。
集めれば集めるほど魅力的な特典が与えられるのか、それとも割引率がアップするのかは不明ですが、地域の郵便局や事務局が何らかのご褒美を計画しているようです。
日本郵政の「NFT×地方創生」プロジェクトが全国へ広がる可能性
地方でNFTを活用する取り組みは、新潟県長岡市山古志地域が発端であると考えられています。
それ以前に企画されたものがあったかもしれませんが、画期的なプロジェクトとして全国に知られるようになったのは2021年2月にスタートした「Nishikigoi NFT」が初めてでしょう。
山古志地域で育った錦鯉は海外から買い付けに訪れるバイヤーも多く、世界的な評価も高いです。
そんな養鯉が自慢の小さな村で、「デジタル村民」を募集する取り組みが始まりました。
Nishikigoi NFTを取得したデジタル村民は、実際に山古志を訪れて地域住民と交流することも多いとか。
伝統のお祭りを一緒に楽しんだり、雪かきツアーに参加してお年寄りの雪かきを手伝ったり、人口わずか800人ほどの地域に多くの人が集まるきっかけになっているといいます。
仮想世界とリアルな世界が、NFTという一つのパスポートでつながっているのです。
日本郵政グループでは、自治体プロジェクトへの派遣を通して山古志のようなNFT×地方創生の取り組みを広げていきたいと考えています。
ただ「魅力ある地域なのでぜひ来てください」とアピールしても、どんなことを魅力と思うのかは人それぞれです。
しかし、人と人とのつながりが希薄になった今だからこそ、「地域住民と一緒に楽しめる」というのは珍しく、面白いイベントになりうると思います。
割引券も嬉しいけど、わざわざ遠い場所まで旅行に行くのって特別な体験をしたいからですよね。
地方創生に必要なのは、お得感ではなく特別感なのかもしれません。

地方創生にNFTを活用する理由
クーポンでもポイントでもお得な買い物はできる、ではどうしてNFTなのでしょう。
地域のお店に足を運んでもらいたいなら、直接割引券を配布すれば簡単ですよね。
しかし、クーポンやアプリは使ってしまえばそれで終わり。
期限が切れればただの紙クズで、デジタルで発行されたものなら消滅してしまいます。
これがNFTだと、ブロックチェーンによって存在していたことも、利用されたことも記録として残るのです。
私は、地方創生プロジェクトにおいて活用されるNFTは特典を受け取るためのチケットではなく、証明書だと思います。
その地域に興味を持ったこと、地域に足を運んだこと、観光したことや名産品を食べたことなど、その地域で実際に得られた「体験」の証としてNFTを取得するのでしょう。
今は日記帳とかアルバムにチケットとか入場券を貼っている人も少ないと思うけど、ウォレットやアプリに記録されていればいつでも見返せますよね。
地方創生×NFTプロジェクトが全国に広まれば、自分のデジタルウォレットに各地域のNFTを集めるという新たな趣味が流行るかも!
まさに全国行脚、NFTスタンプラリーができるわけです。
御朱印集めの次は、ご当地NFT集めがブームになるでしょう。
日本のNFTプロジェクトにモノ申したいこと
地方創生×NFTは有意義な取り組みだと思うけど、まだまだ改良するべき点がたくさんあると思います。
まずは、NFT自体の魅力について。
ご当地ゆるキャラや自治体・地元企業のマスコットキャラクターを使うのは良いけど、せっかくならビジュアルにこだわってもらいたいものですね。
なかには全然可愛くないやつとか、NFTにした時のデザイン性が微妙なやつもあるので(^_^;)
地元住民から絵が得意な人を探すより、いっそのことお金をかけてプロのデザイナーやイラストレーターを頼ってみてはいかがでしょうか。
それから、「それNFTじゃなくても良くない?」という内容のものも多いので、活用方法や特典についてはしっかり吟味していただきたいです。
日本の自治体がNFTを上手に活用するには、海外の事例を学ぶ必要もあると思います。
知っている人、使っている人もまだ少ない分野なので、技術に関する理解とマーケティングリサーチが重要ですね。
コメント