私たちの国では、暗号資産取引での所得に世界でも類を見ないほどの高い税率を課しています。
アメリカやイギリスでは20%、フランスでは30%、個人投資家の場合は非課税という国もあるなか、日本は最大55%もの税金が取られてしまいます。
これではいつまでも暗号資産投資家が増えることはなく、たくさん稼げば稼ぐほど損する国になってしまうでしょう。
3月7日に国会へ提出された資金決済法の一部改正案には、暗号資産やステーブルコインに関する規制の見直しが含まれているといいますが…
今回は、これから日本の暗号資産のルールがどう変わろうとしているのか見てみましょう。
暗号資産投資家が最も注目するべき法案について
2025年1月に開幕した通常国会において、暗号資産に関連する改正案についての議論が重要な意味を持つことになるでしょう。
与党税制調査会は、暗号資産取引で発生した所得を「総合課税」から「申告分離課税」へ移行するよう提案しています。
金融庁がイニシアティブを取っている資金決済法改正案では、暗号資産を金融商品取引法の対象に含めることも視野に入れているとの報道がありました。
結局これで何が変わるのかというと、最大55%の税率が一律20.315%にまで下がる可能性があると期待されているのです。
暗号資産取引はなぜか雑所得扱いのため総合課税が適用されており、稼げば稼ぐほどぞの税率は上がってしまいます。
1年間に4000万円以上稼げば、半分近く税金で持っていかれてしまうことに…
いっぽう株式やFX取引での所得は「株式等譲渡益」として申告分離課税が適用され、どれだけ稼いでも一律20.315%。
1年間に6,949,000円を超える金額を暗号資産投資で稼ぐ人なら、申告分離課税の方が税金を抑えられます。
また、株式やFXと同じ所得区分になれば損失繰越制度が利用できるはずです。
長期的な投資もやりやすくなり、市場の活性化が期待できるでしょう。
確定申告の方法も雑所得より株式等譲渡益扱いの方が簡単なので、良いこと尽くめというわけですね。
ただし、総所得額が低いと総合課税の方がお得だった…というケースもあるので、すべての投資家にメリットがあるわけではありません。
ちなみに、FXは2012年まで雑所得として扱われ、暗号資産と同じように総合課税が適用されていました。
外国為替及び外国貿易法(外為法)の改正によって申告分離課税が導入されることになりましたが、それが達成するまでに15年もの月日を要したとか。
ただでさえ日本は世界に遅れを取っていますから、暗号資産についてはもう少しスピーディーに改革してもらいたいと思います…

関連団体の要望は?
暗号資産業界の各団体からは、10年以上も前からさまざまな税制上の障害を解決するよう求められていたようです。
日本が暗号資産税制の改革に向けて動き出したのは、3年ほど前から。
しかし、暗号資産取引における所得(売買差益)についての議論はなかなか進みませんでした。
ここへきて重い腰を上げ始めたのは、やはり個人投資家からも要望の声が上がるようになったからでしょう。
SNS時代になり、暗号資産に消極的な政府関係者が名指しで批判されるようになったことも革命の風を起こす要因になったと考えられます。
日本の暗号資産税制が変わらなければ、国内企業がクリプト界に参入しづらくなるだけでなく、関連人材の国外流出、グローバル競争力の低下を招く可能性すらあると指摘されてきました。
新経済連盟や日本ブロックチェーン協会(JBA)、日本コミュニティ放送協会(JCBA)、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は、暗号資産所得の申告分離課税への移行と一律20%の税率を支持する意見で一致しています。
さらに暗号資産ETFの実現やデリバティブ取引の税制についても検討すること、レバレッジ規制を緩和することなども求めているようです。
3月6日自民党が制度改正案を提出
2024年から具体的な議論が重ねられてきましたが、2025年3月、ようやく自民党からも暗号資産に関連する改正案が提出されることになりました。
デジタル社会推進本部内に併設されたweb3ワーキンググループ(web3WG)は、暗号資産を金融商品取引法の一部として迎え入れつつ、従来の有価証券とは違うアセットとして位置づける制度改正案を公表。
現行では資金決済法が暗号資産を規制していますが、これからは株式や債券、投資信託の受益証券などの有価証券を規制する金融商品取引法の範疇に含めたらどうかと提案しているわけですね。
ただし、すべてを従来の有価証券と同じ扱いにしてしまうと、「暗号資産は証券」ということになってしまいます。
米証券取引委員会(SEC)の主張を支持するような形になると、それはそれで色々と不都合が生じるわけで…(^_^;)
なかなか難しいところですが、日本政府には暗号資産を良きグループに納めてもらえれば幸いです。
加藤財務大臣としては、今年6月までに暗号資産税制改正について何らかの決着をつけたいと考えているようです。
これから3か月、「また検討で終わったよ…」とガッカリされないように、関係閣僚のみなさんには寝る間も惜しんで働いてもらわなければなりませんね。
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