2026年をめどに、金融庁は暗号資産を金融商品に盛り込む改正案を国会に提出したいと考えているようです。
日本の法律において、ビットコインの主要な暗号資産はこれまで決済手段として扱われてきました。
これが世界的な流れや市場の実態にそぐわないと指摘され、ようやく暗号資産が正しいジャンルに分類される機会が巡ってきたのです。
改正案には、「暗号資産に関するインサイダー取引」についての規制も導入されるとみられています。
今回は、暗号資産におけるインサイダー取引とはどんな行為を指すのか解説しましょう。
インサイダー取引とは
株式投資では、株価を上昇または下落させる要因を事前に知ることで有利な条件で取引できます。
例えば、ある企業の業績が向上しそうだとの情報を得た場合、株価が上昇する前に購入すればお得に株式をゲットできるわけです。
反対に事業が上手くいっていないという情報が入れば、株価が急落する前に早めに手放して損失を抑えようとします。
投資家は決算報告書などの「IR情報(企業が株主や社会に対して提供する情報)」をチェック、またはマネー雑誌に掲載されている金融アナリストのリポートなどを購読して情報収集を行うことも多いです。
これらの媒体から得られる情報は一般的に公開されている内容であり、誰もが入手できます。
それを基に投資判断をするのが一般的な方法ですが、必ず上手くいくとは限りません。
より信ぴょう性の高い、しかも株価をぴったり予測できるほどの具体的な判断材料を得ようとするなら、その企業の代表や社員から情報を得るのが一番確実ですよね。
もしそれを実践して、社内の者しか知りえない重要な事実を得た上で株式取引を行うと…
あなたは金融商品取引法における違法行為をしたとして逮捕される可能性があります。
日本だけでなく多くの国では、ある事業の内部者にしか知ることのできない重要な情報に接する立場の者が、その立場を利用して情報が公表される前に株式売買などを行う「インサイダー取引」を禁じているのです。
もっと簡単に言えば、その企業の身内からこっそり教えてもらった情報をもとに株式取引をしてはダメってこと。
対象となる取引として、株券・社債、優先出資証券、新株予約権証券、いわゆる「未公開株」と呼ばれる上場前の株式に関する情報も含まれます。

暗号資産のインサイダー取引って?
それでは、暗号資産投資におけるインサイダー取引とはどのような行為をいうのでしょうか。
例えば、海外ではCoinbaseの元関係者が自身の弟とその友人に上場前の暗号資産についての情報を漏洩して約1億3,800万円の不当利益を得た…という事件がありました。
彼は通信詐欺として刑事起訴され、米証券取引委員会(SEC)からはインサイダー取引の疑いで民事提訴されています。
日本の金融庁と色々あったBinanceも、社員が非公開情報によるインサイダー取引をしたとして現在法的手続きが進められているとか。
この社員は新興プロジェクトのトークンリリース情報を事前に入手し、複数のウォレットを使って大量購入。
トークンのローンチが正式発表された後、すぐさま売却して爆益を得ていたようです。
日本のルールはどう変わる?
暗号資産の場合も基本的には株式投資と同じで、一般的に公開されていない情報で自分だけ儲けようとするのは違法行為とみなされます。
しかし、これは海外での話。
日本ではまだ、インサイダー取引の範疇に暗号資産が含まれていなかったのです。
その理由は暗号資産が決済手段の一つとして定義されており、有価証券のような金融商品ではないと考えられていたから。
今年2月、金融庁は暗号資産の枠組みを改め、有価証券に準ずる金融証券のグループに含めたいとの考えを公表しました。
完全に有価証券化するわけではありませんが、これからは金融商品取引法に規制される投資銘柄として定義する方向で議論を進めていきたいとしているわけです。
まだはっきりどう分類されるか、いつ施行されるかは定かではありませんが、金融庁は2026年度の成立を目指して動き出しています。
すべての暗号資産が対象ではない!?
暗号資産に詳しい専門家のなかには、暗号資産とトークンを明確に分けるべきだと指摘する人も多いです。
私もこれに同感で、ブロックチェーンで管理されるすべてのデジタル通貨を金融商品として取り扱うのは危険だと思います。
「金融商品にあたらないトークン」の枠組みも必要であり、ビットコインやイーサリアムのような主要銘柄と区別するべきではないでしょうか。
SECもミームコインについては「証券法の対象とならない可能性がある」との見解を表明しており、基本的には利益を生まない銘柄だといえます。
しかし「ミームコイン」の名を冠していても、ホルダーへの配当があったり、プロジェクトへの期待値によって売買価格が大きく変動したりする場合、その実態は「証券」であると判断せざるを得ません。
これから金融庁が用意しなくてはならない材料は膨大な量になると思いますが…
ぜひ一つひとつの銘柄についてしっかり精査して、すべての暗号資産・トークンが然るべきところへ分類されることを期待します。
やっと日本の暗号資産ルールも正しい方向へ進みそう…!
良いところで政権が交代したり、関係大臣がスキャンダルで辞任したりすることのないよう祈ります(^_^;)
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