2021年から2022年にかけて、NFT(非代替性トークン)が世界的なブームを巻き起こしました。
無名のアーティストが描いたイラストが高値で取引され、著名人のSNS投稿を高額で落札する人もいて、まさにNFT狂時代でしたね。
しかし有名プロジェクトのNFTの売れ行きが怪しくなってくると、徐々に市場が衰退しはじめます。
暗号資産の価値もダダ下がりした2023年には、NFTのポジティブなニュースもほとんど聞かれなくなりました。
それから2年、最近またNFT業界が輝きを取り戻しつつあります。
今回は、近年のNFT活用事例についてご紹介しましょう。
チケットの不正転売が社会問題に
昨今、初めから高額転売するつもりで組織的にチケットを大量購入し、フリマアプリなどに出品する転売ヤーも多く見られます。
特に人気アーティストのライブはただでさえチケットの当選倍率が高いのに、ファンでもない転売ヤーに根こそぎ買われてしまうのではやってられないですよね。
通常よりかなり高いお金を払わないとライブを観覧できないと不満を持つ人も多く、転売ヤーの荒稼ぎによる被害は社会問題化しています。
3月には東京地方裁判所が「不正転売が主催者の権利を侵害している」との判断を下し、転売者の発信者情報開示を命じました。
しかし、イベントの主催者や一般客からは「そもそも転売させないシステムを構築することが必要だ」との声も挙がっています。
転売ヤーを撃退!?NFTができること

イベントの公演チケットなどを販売するプラットフォーム「TicketMe(チケミー)」を手掛ける宮下大祐CEOは、不正転売を防ぐ対策方法としてNFTが有効であると指摘する業界関係者のひとりです。
今年3月に開催された自民党の知的財産戦略調査会において、宮下CEOはNFTを活用したチケット流通の可能性についてプレゼンテーションを行いました。
すでにチケミーでは、チケットの購入から保管、実際にライブ会場へ入場するまでのプロセスをすべてブロックチェーンに記録するシステムを稼働させています。
チケミーで取引されるライブチケットはNFT化されており、正規なルートで転売できる「リセール」という機能も標準装備されているそうです。
これは急用でライブに行けなくなったチケット購入者向けのサービスで、二次流通が成立するとイベント主催者に差額の9割(最大)が還元されます。
転売価格の上限をあらかじめ設定することもできるため、不正な転売の抑止力になるでしょう。
チケット購入やリセールの履歴はブロックチェーンに記録され、透明性の高い取引となります。
フリマアプリでチケットを探すと転売ヤーが儲けてしまうだけですが、チケミーでNFTチケットを購入すれば、たとえライブに行けなくなったとしても好きなアーティストを間接的に応援できるというわけですね。
不正転売を防ぐには、まず転売ヤーが稼げない状況を作り出さなければならないのです。
NFTによるセカンダリーマーケットの可能性
投資分野において、発行済みの株式や債券などを投資家同士で売買する市場は「セカンダリーマーケット(流通市場)」と呼ばれています。
NFTの仕組みを応用すれば、ホテルや飲食店などのサービス業でも二次流通による新たな流通形態が可能になるでしょう。
例えば特定の地域に建つ物件の中からランダムに選ばれたホテルに滞在するという画期的な予約システムの「THE GRAND HOTEL COLLECTION」では、NFTを活用した宿泊権を提供しています。
誰もが羨む高級ホテルに、通常の予約方法よりも3~5割ほど安く宿泊できるというお得なサービスです。
どのホテルに泊まれるかは抽選で決まりますが、宿泊権を家族や友人にプレゼントしたり、第三者へ売却したりすることもできます。
ただお得に泊まれるというだけでなく、宿泊権のNFT化により透明性の高い取引が可能です。
NFT技術を活用すれば、あらゆる分野で安全安心なセカンダリーマーケットが構築できるようになるでしょう。
転売をなくすというより、正しい二次流通の方法を提供することが大切ですね。
NFTやブロックチェーンの仕組みを従来の取引システムに導入すれば、不正転売のない社会の実現も夢ではありません。
NFTは「RWAトークン」へ
2021~2022年頃は、デジタル上に構築したデータ(画像や動画)をブロックチェーンに刻み、NFTとしてこの世に誕生させることがブームとなりました。
クリエイターは作成したデジタルデータをNFT化して価値をつけ、利益を生む商品としてブロックチェーンに登録していったのです。
しかし、これは路上で絵を描いて値段をつけ、手売りしているのとそれほど変わりません。
今振り返ってみると、NFT化する意味があったのか疑問を感じてしまう作品も数多く存在していたと思います。
最近は、新たに作成したデジタルデータをNFTにするのではなく、現実世界にもともとあった資産をNFT化することによって盗難や改ざん、経年劣化による消失から保護しようという流れが活発になってきました。
現実世界の資産とは、株式や債券、金、不動産などのほか、歴史的な美術品も含まれます。
現実世界の資産は「Real World Asset(RWA)」とも呼ばれますが、これを暗号資産やNFTとして発行すると「RWAトークン」となります。
RWAの存在を証明するものをブロックチェーンに登録し、取引履歴を記録することが、今後のNFTの新たな意義になるでしょう。
これからNFTを始めるなら、まずはどんなRWAが後世に残されるべきかを考えなければなりません。
多くの人にNFT化する必要性を納得させることができれば、そのプロジェクトは上手くいくはずです。
クリエイターデビューを目論んでいる人は、本当にNFT化する意味があるのか自身の作品を見直してみましょう。
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