ビットコイン投資で大きな資産の形成に成功している人も増えているようで、暗号資産界隈では「詐欺により一層気を付けよう」とか、「強盗に遭う可能性が高いから資産状況は明かさないように」とか、さまざまな注意喚起がSNSに投稿されています。
しかし、暗号資産の「相続」については、まだ考えている人が少ないかもしれません。
今回は、バイナンス創業者のCZ氏も提唱しているという暗号資産の「遺言機能」について考えてみましょう。
新しい家族の形では大切な人へ遺産が残せない!?
先日、朝のニュースでお墓問題とか、相続問題について取り上げていました。
最近は従来の家族の形にこだわらない人が増えていて、結婚しない、子どもを持たない、同性パートナーと暮らす、複数人でシェアハウスに住むなど、選択肢が多様化しています。
しかし現行では、法律上の「配偶者」や「親子」に分類されない関係の者は相続人として認められません。
いくら愛し合っていても、長年支え合って一緒に生活していても、単なる「パートナー」や「同居人」では大切な人からの遺産を受け取ることはできないのです。
これはもちろん暗号資産の場合でも同じで、「君のために貯めておいたからね」と言われても法律上の相続人に該当しなければ一銭も受け取れません。
遺言に記載しておくことで、法定相続人以外にも遺産の一部を譲渡できるようになるそうですが…
たとえ故人が遺言書に書き忘れていたとしても、従来の貯金や有価証券などであれば金融機関で資産状況が把握できます。
また、相続人と認められれば、保有者本人以外でも引き出しが可能です。
いっぽう暗号資産は世界中どこの取引所でも保管でき、メタマスクなどの外部ウォレットに保管されている場合は勝手に引き出すこともできません。
多額の暗号資産が誰にも引き出せないまま、ウォレットに眠らせておくことになるかもしれないのです。
たとえ相続が認められても、ウォレットのシードフレーズが分からず、資産を引き出せない可能性もありますしね。

CZが暗号資産プラットフォームの「遺言機能」を提唱!
バイナンス創業者で現在はCEOを退いているチャンポン・ジャオ(CZ)氏は、暗号資産の保有者が亡くなった際に相続できるようにする「遺言機能」を導入するべきだと呼びかけています。
暗号資産を取り扱うプラットフォームは多岐にわたり、中央集権型取引所(CEX)や分散型取引所(DEX)のほか、「Play to Earn」などのGameFi、ブロックチェーンを活用したさまざまなDApps、オンラインウォレットなども無数に存在しているでしょう。
私の彼氏も数年前からあちこちの暗号資産コミュニティに入会しては、フリーミントを利用してたくさんのNFTやFTを取得してきました。
専用プラットフォームのユーザー登録をしたり、指定されたウォレットをインストールしたり、気付けばスマホにありとあらゆるアプリが搭載されていったのです。
どこにどんな資産が保管されているのか、家族はおろか隣でずっと彼の投資活動を見てきた恋人の私ですら把握しきれていません。
もし彼が急に亡くなった場合、これまで取得した暗号資産やNFTはどうなるのでしょうか。
CZ氏の言うように、それぞれのプラットフォームで暗号資産の遺言機能を活用すれば、資産の保有者本人が相続人を選ぶことができるはずです。
法定相続人以外に資産を譲り渡したいという場合にも、暗号資産プラットフォームの遺言機能は役立つと思います。
バイナンスは実装済み!?
CZ氏が遺言機能について呼びかける以前に、暗号資産取引所バイナンスではユーザーが相続人を指定できる機能を導入していました。
これは6月12日のアップデートによる新機能で、緊急連絡先や相続人の登録が可能です。
長期間ログインされない状態が続くと、あらかじめユーザーが指定しておいた緊急連絡先へ通知が送られます。
そして連絡を受けた人物はユーザーの所在を確認し、死亡していると判明すれば相続請求のステップに移行できるというわけです。
従来の金融システムでは、預金など利用のある銀行へユーザーの死亡が伝わって初めて相続の必要性が認識されますよね。
一定期間動きのない預金は休眠口座に入りますが、そのなかにはすでに預金者が死亡しているケースも少なくないと思います。
バイナンスの機能では取引所から緊急連絡先へ通知される仕組みになっているので、生死が不明の場合でもユーザーの資産状況を把握することができるのです。
プラットフォームの遺言機能と民法上の相続ルール
バイナンスの通知機能は、自動的に指定人への相続を決定するものではありません。
ユーザー本人が「この人に譲渡したい」という意味で緊急連絡先に登録していても、法律上の相続人でなければ遺産を受け取る権利がないのです。
民法上の相続法で認められる遺言書にも記載していれば相続できる可能性はありますが、暗号資産プラットフォームの遺言機能一つで相続できるわけではないのでご注意を。
バイナンスから「長期間ログインがありません」と通知されるだけで、相続できるかどうかは別の問題なのです。
ただし、ウォレットのパスワードやシードフレーズさえ把握していれば、相続人でなくても資金を引き出せるという考え方もできます。
つまり暗号資産の相続において本当に必要なのは、遺言書でも相続人としての資格でもなく、ウォレットを開くための鍵ということになるでしょう。
暗号資産はまだ歴史の浅い新しいお金のあり方であり、相続に関する具体的なルールが不明瞭な点も多いでしょう。
パスワードやシードフレーズさえあれば誰でも引き出せる一方、相続の手続きを踏まず個人の資産を取得することが違法になる可能性もあります。
この件に関しては、もう少し勉強する必要がありそうですね(^_^;)


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