国内ニュースを網羅する情報サイトで「仮想通貨」と検索すると、必ずと言って良いほど詐欺事件の記事がヒットします。
海外発のニュースレターでは先進技術の発展や仮想通貨の最新動向について語られているのに、日本ではまだまだ危ないもの、リスクが高いものだと認識されることの方が多いようです。
しかし、海外でも仮想通貨に関連する詐欺事件は多発しており、日本で発生した事件とは比べ物にならないほど多額の資金が犯罪者の元に流出しています。
私たちは恐れるだけでなく、実際にあった事件から詐欺師の手口を知り、被害に遭わないための対策を講じなければなりません。
今回は、米司法省が摘発したというカンボジアの大規模詐欺ネットワークについて解説しましょう。
カンボジア詐欺グループが摘発される!ボスは大富豪だった
2025年10月14日、米司法省(DOJ)はカンボジアを拠点に詐欺を行っていたとされる強制労働詐欺ネットワークを摘発。
約150億ドル相当のビットコインを押収しました。
この金額は史上最大規模の被害額ともいわれ、アメリカ犯罪史上稀に見る重大な金融犯罪事件として世界から注目されています。
首謀者の容疑がかかっているのはカンボジアの実業家Chen Zhi(陳志)氏で、人身売買によって集められた人々を使って仮想通貨投資詐欺をさせていたとみられています。
Chen氏は「ヴィンセント」とも名乗り、裏社会ではよく知られた人物でした。
自身が経営するプリンス・ホールディング・グループを隠れ蓑に、世界中の投資家をターゲットにした詐欺で荒稼ぎしていたとか。
私はもっと渋いオジサンを想像していたのですが37歳と若く、人当たりの良さそうな可愛らしいタイプの童顔ですね…
中国出身でイギリスとカンボジアの国籍を取得し、カンボジアを拠点とする複合企業の会長兼CEOを務めています。
表向きは慈善活動にも熱心な青年実業家、その裏には人身売買被害者を強制的に働かせる詐欺グループのボスの顔も持っていたようです。
押収されたビットコインは米当局の管理下にありますが、Chen氏は現在逃亡中とのこと…
米司法省は、世界各国に向けて国際的な捜査協力を求めています。
カンボジア詐欺グループの手口は?

捜査によって、Chen氏が主導していた詐欺グループの手口が徐々に明らかになってきました。
実際に詐欺行為を行っていたのはITやマーケティングなどの分野に関連する求人を通じて集められた人々で、虚偽の勧誘に騙されてやってきたようです。
カンボジアに到着すると、詐欺グループの幹部らに監禁されて人身売買の被害にも遭いました。
詐欺を強要された者はメッセージアプリまたはSNSを通じてターゲットと接触し、偽りの恋愛関係・友情をエサに信頼を得ることに成功します。
そして仮想通貨投資プラットフォームに誘導すると、被害者に多額の資金を送金させました。
さらに足がつかないよう、100社以上が登録するダミー企業ネットワークを経由させて資金洗浄を行っていたようです。
被害額は昨年だけで40億ドルを超えており、30か国以上の被害者が確認されています。
ロマンス詐欺の異名が怖すぎる!
Chen氏が首謀者とみられる詐欺グループの手口は、「豚の屠殺(Pig Butchering)」型だといわれています。
なんて恐ろしいネーミングなんだと驚きましたが、日本では「ロマンス詐欺」と呼ばれる手口と同じものです。
これはターゲットとの間に親密な関係を築いた上で送金させる方法で、食べるために豚を太らせる畜産に似ていることから名付けられたといいます。
恋愛感情を高ぶらせてターゲットを騙すロマンス詐欺のほか、友情関係を築いて支援してもらったり、セミナーに入会させて「一緒に成長しよう」と誘ったりするのもこの手口に分類されるでしょう。
資金を騙し取るまでに時間はかかりますが、ターゲットの心を掴み、深く信頼させることでより多くの資金を得られます。
また、詐欺と疑われ「もう投資はしない」と言われても、恋愛関係にある相手からお金を受け取る方法はいくらでもあります。
投資以外にも、
「結婚費用を貯めておくよ」
「一緒に住むための家を買おう」
などと言われて送金してしまうケースも多いです。
海外グループの詐欺に騙されない方法は?
世界中のターゲットを相手に詐欺行為を行ってきた大規模犯罪グループに対し、私たち投資家はどんな対策ができるでしょうか。
高性能のセキュリティシステムを導入するとか、AIを使って詐欺師を特定する前に、もっと簡単にできる方法があります。
それは、SNSで知り合った人にお金を送らないこと。
ウォレットの番号を教えたり、シードフレーズを教えたりしないこと。
たとえ恋愛関係になったとしても、相手を深く信頼したとしても、送金さえしなければ良いのです。
どんな甘いメッセージを送っても全く送金してくれなければ、「これ以上何をやっても時間の無駄だ」と詐欺師も諦めるでしょう。
仮想通貨詐欺の多くは、投資に勧誘するか、恋愛感情をくすぐって支援させるかのどちらかです。
SNSで知り合った人とは、直接顔を合わせないまま親密な関係になるべきではありません。
見知らぬ人からのメッセージは見ない、返信しない、触らない(URLなど)。
この3原則を守ることが、あなたの資金を守ることにつながるのです。


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